幻の警視庁捕手術・十五の型! 大東流/合気道との関係とは?
捕手術解説
堀田捨次郎=著 A5判 並製
4,180円(本体3,800円+税10%)
著者、堀田捨次郎(1883-1942)は明治〜昭和戦前期の剣術家で、「天才剣士」と謳われた人物。大佛次郎『鞍馬天狗』のモデルとしても有名な幕末の剣豪・渡辺昇の微神堂道場で中西派一刀流を学んだ堀田はたちまち頭角を表し、「近代薙刀術史上最高の名人」園部秀雄を、第六回武徳祭大演武会にて紅顔の19歳で撃破。一躍剣術界の注目を集める新星となった。その後わずか27歳にして大日本武徳会の教士号を授与されるが、『剣術教範』をはじめ、剣道指南書を複数刊行した武道理論家としての顔も持ちあわせている。
そのような堀田の著作のなかでも異色の存在が本書、『捕手術解説』である。警視庁は1930年、従来の柔道系統に留まっていた捕手術に剣道の要素も採用して改良することを計画し、永岡秀一や三船久蔵らの柔道家に加え、堀田や中山博道らの剣道家を技術制定委員に任命した。柔剣道の技術統合に加え、捕手術自体の近代化という難問に直面し、激論と度重なる実演のすえに制定されたのが「前捕」から「脚払」までの十五種類の型を持つ警視庁捕手術であり、本書にはその技術が余すところなく収録されている。
豊富な写真と詳細な文章で解説される警視庁捕手術の技の数々は武道研究史上きわめて貴重であるが、大東流合気柔術に相似した固め技が確認され、使用法こそ異なるが「一教〜五教」という型の体系名称を植芝盛平の合気道に先んじて使用しているなど、大東流合気柔術/合気道との関連性が確認されるのは興味深い。また、共に技術制定委員を務めた中山博道が植芝盛平と深く親交を結んでいた事実はよく知られており、何らかの技術的交流があった可能性を暗示している。
本書第一章の「捕手術の意義」の解説の通り、「拳銃、洋小刀(ナイフ)」などの現代的凶器を制圧する「杖術、棒術、十手術、槍術、唐手術、柔術、剣術、施縄術の特質を結合総合」した「現代武術」の宝典として、読者諸賢に於かれてもこれを活用されることを強く推薦する次第である。
第一章 捕手術の意義/意義/総則/訓練通則/捕手術練習及準備心得/武器及置き方/武器の持ち方/短刀及真剣の取扱方/木剣及び短刀の使ひ方/杖及十手の使ひ方/槍棒の使ひ方/始めの礼式/終りの礼式/練習と号令/気合と発声/間合/術の名称及活用法/施縄方法の解説後一文字縄(受者匐伏)/片膝結縄(受者仰向)/前後紋縄(受者仰向)/施縄応用に就て/人体名称
第二章 捕手術分部的解説/徒手居捕/前捕(一本目)/後捕(二本目)/徒手同行及立合/摺違小手拉(三本目)/摺違腕拉(四本目)/袖取(五本目)/短刀対十手/突込(六本目)切掛(七本目)/短刀対杖/追捕(八本目)/下突刺(九本目)/太刀対杖/中段(十本目)/中段解説/脚斬(十一本目)/上段(十二本目)/切下(十三本目)/槍(長棒)対杖/突出(十四本目)/脚払(十五本目)
第三章 応用心得
第四章 実験談
第五章 活法