伯家神道の継承者の古事記神代巻をめぐる哲学的思索の軌跡
哲学 生命の甕
A5判 並製 鬼倉重次郎(足日公)=著
4,180円(本体3,800円+税10%)
鬼倉重次郎は明治35年に辛島並樹より伯家第22代雅寿王から青柳種信伝の伯家修法を授伝されるが、血気盛んな重次郎にはその伝法の真価は未だ認識できず、玄洋社員として政治活動に奔走、大正五年の大隈重信襲撃爆弾テロ未遂事件に連座し収監、川面凡児が助命嘆願もあり(当時の爆発物取締罰則は未遂でも死刑)、大正七年の爆取改正で禁固七年に処せられ一命を取り留めた。これを機に覚醒した鬼倉は「文明の存するところには必ずそれに相応しい宗教と哲学がある」という信念のもと獄中で寝食を忘れ、『古事記』神代巻に向き合い、「真神道」の「驚異すべき完全な宗教及び哲学」を発見する。鬼倉のような当時の知識人はこのような知的イニシエーションを経てじめて神道人として立つことができたのである。当時主流の新カント主義哲学に対するオルタナティブとして構想されているだけにやや抽象的ではあるが、本田親徳の「古事記神理解」やカタカムナにも通ずる志向も確認され、複合的視座から神道を考える上で今なお貴重な資料と言えよう。しかるに伯家神道継承者の哲学的思索の軌跡を伝える原本は古本市場にも出ることなく、国会図書館にすらないのは斯道にとって誠に憂うべき状況であり、今般の天津微手振の伝の公開とあわせて復刻することにした。